ロードサイド店舗が人手不足で倒産しないための2つの対策

 人手不足を克服するには、既存スタッフの退職防止という止血策と新規スタッフの応募促進という輸血策、この2つの対策が重要です。

 私は、人手不足を克服するための対策をテーマにしたコラムをこれまで何本も書いてきました。これは、私が過去、ガソリンスタンドの店長として人手不足を克服した経験や、コンサルタントとして人手不足に苦しむ経営者と接してきた経験などを元にしています。

 特にロードサイド店舗は、アルバイトスタッフが主戦力になっているケースが多く、人材確保は大きな課題となっています。

 そんな中、東京商工リサーチが、2018年4月~2019年3月の「人手不足」関連倒産は過去最多の400件に達したことを発表しました。400件の内訳は以下の通りです。

 ・後継者難269件 前年度比7.6%増
 ・求人難76件 前年比162.0%増
 ・人件費高騰30件 前年比114.2%増
 ・従業員退職25件 前年比38.8%増

 「求人難」が原因の倒産件数の伸びが目立ちますが、これと「人件費高騰」「従業員退職」は密接に関連している印象があります。すなわち、求人難を克服するために、既存スタッフの退職を防いだり、応募者を増加させたりするべく、給与を上昇させるも、効果が現われない。そんな構図が描けるのではないでしょうか。

 今回のコラムでは、上記を受け、人手不足による倒産を回避するための2つの対策を見ていきたいと思います。

対策1:既存スタッフの退職防止策

 退職を防止するには、現在の仕事を続けようと思わせ続けなければいけません。つまり、仕事を継続するモチベーションを向上させ続ける必要があります。ここで、高いモチベーションの源は、賃金ではないことに留意しておく必要があります。

 上図は、アメリカ合衆国の臨床心理学者である、フレデリック・ハーズバーグ氏の動機付け=衛生理論の概念図です。

 人は、動機付け要因が充足されていると積極的な態度が引き出され、モチベーションが向上します。逆に動機付け要因が充足されないとモチベーションは低下しますが、マイナスの領域にまでは至りません。これに対して、衛生要因が充足されていると消極的な態度が改善され、モチベーションも向上しますが、プラスの領域には至りません。
 これらを実証研究で明らかにしたのが、ハーズバーグの動機付け=衛生理論となります。

 動機付け要因の具体例としては、周囲からの承認、責任、達成感、仕事そのもの、昇進などが挙げられます。そして衛生要因の具体例としては、企業の方針、管理監督、給料、人間関係、労働条件などが挙げられます。

 人は高い給料を望みます。ですが、自身のスキル、所属している業界動向からすると、上限額は想像がつくはずです。それを大幅に超えると却って不安を覚えます。このように衛生要因は、天井感のある要因ですが、動機付け要因は、それがありません。よって、動機付け要因を充足することにより、高いモチベーションを与えることが可能となります。
 【参考コラム】年上の部下への対応

対策2:新規スタッフの応募促進

 ①基本的な考え方
 求人広告には、ハローワークなどの無料媒体と新聞折込みやインターネットなどの有料媒体があります。無料媒体は自腹を切っていない分、「無料だからこんな内容でいいや」的な意識から応募者への訴求内容に甘えが出がちです。
 これに対して有料媒体は、自腹を切りますので、効果を出さなければというプレッシャーがかかります。それは、応募者への訴求内容に真剣さが宿るということです。
 【参考コラム】応募がない…人材不足の解決策として活用したい求人広告の考え方

 ②ビジュアルに訴える
 求人広告を見て応募を検討する方は、給料や勤務条件だけを重視しているのではなく、「誰と働くか」「どんな店で働くか」も重視します。よって、求人広告には、店長の写真や店舗の写真を掲載する必要があります。
 株式会社ESSPRIDEが全国の従業員数300名未満の企業に勤務している20~49歳の正社員を対象に次の質問を行いました。
 「就職や転職をする場合を想定して、会社のホームページやパンフレットに経営者の顔写真がある会社とない会社を比較して、どちらの会社の面接を受けたいと思うか」
 この質問に対して、69%の方が「顔写真がある会社」「どちらかと言えば顔写真がある会社」の面接を受けたいと答えたという結果からも、写真の重要性は高いと言えるでしょう。
 【参考コラム】人材の募集をかけても人が来ないのはなぜか

 ③メッセージ性を盛り込む
 目指すべきビジョンを持つ企業は強いですし、それに共感した人材が集まります。
 よって、「当社のビジョンは〇〇です。このビジョンを達成するには、現在の人員では質も量も足りないのです。だから、このビジョンを達成するために、私たちと一緒に走ってくれる方を募集しています。」といった内容を求人広告で訴求していく必要があるでしょう。
 【参考コラム】ロードサイド店舗における効果的な人材の募集広告の作り方とは

 ④店頭に求人広告を掲示する
 アルバイトの労働市場に特化した調査研究機関であるツナグ研究所によると、アルバイト応募者の2名に1人は事前に店舗の下見に来ています。
 求人広告を見て応募してみようかな、と考えた人材は、顧客として同店を訪れてみるものです。その際に、店頭に求人広告がなかったら、本当に募集しているのか、新規スタッフを欲しているのか、不安になり、応募を躊躇する可能性が高まります。よって、店頭に求人広告を掲示する必要があります。
 【参考コラム】募集しても応募がない。自店の人材確保ができない3つの理由

 ここまで、賃金以外の魅力を高めて既存スタッフの退職を防止し、求人広告を充実させて新規スタッフの応募を促進させるという対策を見てきました。
 労働力人口が減少している今、ロードサイド店舗が生き残るには、戦略的に人手を確保する必要があることは言うまでもありません。そしてそのことが、ネット通販との差別的優位性に繋がることに留意する必要があるでしょう。

メルマガ会員様募集中

 メルマガ会員様には、リアル店舗の現場経験20年以上、コンサルティング歴10年以上【通算30年以上のノウハウ】を凝縮した【未公開のコラム】や、当サイトに掲載したコラムの【解説動画URL】を優先的に配信しています。
登録はこちらから
↓↓↓

お探しのページが見つかりません。

電子書籍のご案内

 1年で70人のアルバイトに辞められたガソリンスタンド店長が人材に全く困らなくなった理由:育成編~人材が育つ職場と人材に見放される職場の境界線~
2020年3月15日発行 定価1,055円

タイトルとURLをコピーしました