集客方法に悩む飲食店の経営者に共通する問題と課題

戦略の考え方

 商売に奇策はないはずです。脂肪を蓄えて作った大きな体は、病気を発症するリスクが高いわけですが、筋肉を蓄えて作った大きな体は長い期間において健康を保つことが可能です。
 奇策によって業績を大きくすることは、脂肪を蓄えて大きくなったようなものであり、様々な弊害を生むはずですので、筋肉質な業績にする必要があります。

 今回のコラムでは、ある飲食店経営者の集客に関する相談から、ロードサイド店舗の1つである居酒屋の集客策について見ていきます。

その相談が抱える問題と課題

 ある飲食店経営者が抱える以下の相談に触れる機会がありました。

 「居酒屋を経営していますが、消費税率引上げ以降、お客様の入りが減少してしまい、赤字経営が続いています。クーポン系のフリーペーパーや飲食店のポータルサイトなどの広告に掲載しても、客足が回復せず、なかなか利益を出せるレベルになりません。何か効果的な集客方法は無いものでしょうか?」

 この相談からは、いくつかの問題点が伺えます。なお、ここでは「問題」は現状と理想のギャップを引き起こしている原因であり、「課題」は問題の解決策としています。

 この相談から伺える問題の1つとして挙げられるのは、自店独自の視点がないことです。効果的な集客方法を知ったとしても、その方法は、競合他社が簡単に真似できるものであり、効果も出せる方法であれば、自店の業績が向上する可能性は低くなります。

 競合他社が簡単に真似のできない、自店ならではの集客方法が本当の意味で効果的な集客方法であり、課題としては、いかに自店の差別的優位性を活かした事業運営を行うかが挙げられるでしょう。

 では、この課題をどのように解決していくべきなのでしょうか。

自店の差別的優位性とは

 自店の差別的優位性とは、自店の強みと言い換えることができます。強みは同業他社よりも優れており、顧客に価値を提供できる経営資源(人・物・金・情報)を指します。よって、まず、同業他社の状況、顧客の動向を調べる必要があります。

 同業他社の状況については、社名(店名)、自店からの距離、自店から見た特徴の一覧表を作成すると良いでしょう。
 顧客の動向については、商圏人口の推移の他、顧客ニーズを書き出すとよいでしょう。特に料理やお酒、接客の品質についてのニーズを洗い出すと良いでしょう。

 その上で、同業他社よりも優れており、顧客に価値を提供できる自店の経営資源(人・物・金・情報)を探していきます。以下はそれぞれの経営資源を検討する際の視点です。

 人(人的資源):経営者やスタッフの経歴、スキル、キャラクターなど。
 物(物的資源):店舗の立地、店構え、設備、提供する料理やお酒など。
 金(財務的資源):借入金の額などの財務状況、金融機関との関係性など。
 情報(情報的資源):発信している情報や、勉強会その他の媒体から得ている情報。

 なお、かつて私が顧客として関わった居酒屋の差別的優位性として、以下の事例があります。

差別的優位性の事例:人的資源編

 宮崎県小林市の居酒屋「HANARe」では、「大人が1人でゆっくり飲める」というコンセプトの元、現役薬剤師の店主が、顧客の健康に配慮した接客を行っており、人気を博しています。

 【参考コラム】店舗コンセプトに基づく運営の整合性がとれた飲食店とは

 福島県須賀川市の居酒屋「北の酒膳」では、忙しい顧客のために、料理のテイクアウトの相談に乗ってくれるサービスに対応しています。これにより、料理を受け取って新幹線内で晩酌が可能なのです。

 【参考コラム】集客力の高い人気の飲食店がさらに集客力を高め人気を博す理由

差別的優位性の事例:物的資源編

 大阪府大阪市の居酒屋「堺筋本町給油所」では、ガソリンスタンドにあるようなガソリンを給油する機械から酎ハイを注ぐことができます。

 【参考コラム】生き残りをかけたガソリンスタンド運営会社の多角化の方向性

 秋田県秋田市の居酒屋「酒楽亭うみひこ」では、カウンターに日本酒のお燗ができる機械「燗銅壺(かんどうこ)」を設置しており、顧客は自分の好みで日本酒にお燗をつけることができます。

 【参考コラム】1人客から人気があり儲かる居酒屋のカウンター席から伺えること

 このような差別的優位性を全面に出すことにより、顧客には来店する理由が生まれます。その上で、自店のターゲットが若年層であればネット、高齢層であれば新聞折込みチラシなど、駅から自店に向かう人を狙うのであれば駅備え付けのフリーペーパー、観光客を狙うのであればホテルに割引券を置いてもらう、などの集客策が考えられます。

 これにより、他店が容易に真似できない自店独自の筋肉質的な集客が可能となります。

 集客方法に悩む飲食店の経営者に共通する問題として自店独自の視点がないこと、課題としていかに自店の差別的優位性を活かした事業運営を行うかを挙げました。まずは、自店の差別的優位性を見出し、ターゲットにマッチした媒体を使用して、集客力を控除させていただけたらと思います。

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