持続化補助金に2度採択された温泉旅館の計画書作成事例⑦

小規模事業者持続化補助金

 創業60年を迎えるその温泉旅館は、前回の小規模事業者持続化補助金に採択され、問い合わせや予約の増加という成果を得ることができました。そして2度目の採択に挑むべく、再度当該補助金に申請するための計画書を作成しました。

 しかし、そうそう簡単に何度も採択されるとは考えにくいため、弊社へどのようにして計画書のブラッシュアップをするべきかとご相談され、結果として採択されました。そこで、この温泉旅館における2度目の採択に至るブラッシュアップのプロセスをお伝えしていきます。

 以下は、小規模事業者持続化補助金へ応募する際の一般的な提出書類ですが、今回は下図赤枠部分、様式2-1経営計画書兼補助事業計画書①<補助事業計画>「4.補助事業の効果」と様式3-1補助事業計画書②の「Ⅱ.経費明細表」について見ていきます。

 なお、当コラムでは<補助事業計画>のうち、「1.補助事業で行う事業名」は公序良俗に反しない限り、30文字以内にまとめるだけで済むという認識であること、「3.業務効率化(生産性向上)の取組内容」は任意記入であることから解説を割愛しています。また、当コラムの内容は2020年12月11日現在の情報に基づいいています。

1.持続化補助金に2度採択された温泉旅館の計画書作成事例【補助事業の効果】の書き方のポイント

 同館が事前に当欄へ記載されてきた内容は、概ね以下となっていました。

①ホームページとテイストの一致したパンフレットを作成することにより、ブランド価値が向上し、当館の所在する「○○温泉」自体の知名度も向上して、旅館街全体の活性化に寄与できる。
②パンフレットには、近隣観光の紹介による滞在型旅行の提案を掲載することで近隣商店街などに旅行者利用が増え、地域経済の活性化に寄与できる。

 これをどのようにブラッシュアップしていったかを見ていきます。

持続化補助金に2度採択された温泉旅館の計画書作成事例【補助事業の効果】の書き方のポイント (1)因果関係を検証する

 前述の①ですが、「ホームページとテイストの一致したパンフレットを作成すること」と「ブランド価値が向上すること」に直接的な因果関係を見出すことができません。例えば「パンフレットを作成すること」により「当館最大の価値である○○をより多くの方に訴求できる」ため「ブランド価値が向上する」ということであれば、因果が繋がります。

 このように「パンフレットを作成すること」と「ブランド価値が向上すること」にどのような関係があるのかを検討していただき、より詳しい説明を盛り込んでいただきました。

持続化補助金に2度採択された温泉旅館の計画書作成事例【補助事業の効果】の書き方のポイント(2)3方向から効果を検証する

 かつて近江商人は、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」を大事にして商売をしていました。弊社ではこの切り口から補助事業の効果を検討していただくことをお勧めしています。

 つまり、自社・顧客・地域社会それぞれにおける効果を記載するということです。この観点から同館が書かれてきた内容を検証すると、知名度の向上という「自社の効果」と地域経済の活性化という「地域社会の効果」しか書かれておりません。そこで、パンフレットの作成により、顧客にどのような効果があるのかを記載していただきました。

持続化補助金に2度採択された温泉旅館の計画書作成事例【補助事業の効果】の書き方のポイント(3)定量的効果を記載する

 物事には、数値で表すことのできる定量的な側面と、数値で表すことのできない定性的な側面があります。補助事業の効果を検討する際に、少なくとも「自社の効果」は定量的な効果を記載することが可能であるはずです。つまり、パンフレットを作成することにより、どの程度の売上・利益・客数・客単価が見込めるのかということです。

 やってみなければ分からないということであれば、補助金を交付する側としてはリスクが高すぎます。交付することで数値的な効果が上がり、収益性の向上を通じて納税額の増加が期待できるからこそ、補助金を交付する価値があるはずです。

2.持続化補助金に2度採択された温泉旅館の計画書作成事例【経費明細表】の書き方のポイント

 小規模事業者持続化補助金の応募に関するルールブックという位置づけの公募要領には、下図のように「審査の観点」というページがあります。経費明細表をしっかり書かなければいけない理由は、下図赤枠部分に対応するためです。

 経費明細表については、下図赤枠部分の記載にミスが多く見られます。

 具体的には、(1)の経費区分に○付き数字が書かれていない、(2)の必要理由が書かれていない、(3)の回数が書かれていない、(4)の税抜・税込が囲まれていないケースです。(1)に関しては下図のどれかを記載する必要があります。

 同館は(1)と(2)にミスがありましたので追記をしていただきました。

 このようにして、計画書をブラッシュアップした結果、無事採択となりました。同館が記載してきた計画書の特徴として、その欄に書かなくても良いことや、重複した記述が多く、また、切り口を活用するという意識が薄い印象を受けました。

 削るべきところは削り、切り口を用いてコンパクトにまとめることが今回のブラッシュアップのポイントとなった事例と言えるでしょう。なお、当館を取り上げたコラムのバックナンバーは以下となります。

3.小規模事業者持続化補助金の申請書類作成をサポートします

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