人手不足ガソリンスタンド経営さらに苦しくなるロードサイド経営研究所

高騰するガソリンスタンドのアルバイト募集時給

　求人大手のリクルートジョブスによると、7月の関東・東海・関西におけるガソリンスタンドのアルバイト募集時平均時給は、前年同月比で2％上昇し、990円となりました。これはデータで遡ることのできる2015年以来、過去最高水準です。
　この背景には、人手不足があります。しかし、これで人手不足が解消できているか、というとそんなことはなく、応募がない、採用してもすぐ辞められる、とぼやく経営者、店長も相当数存在します。

人手不足を解消するには

　忙しい中、アルバイト応募者との採用面接の時間を割き、高い時給で採用し、新人さんのユニフォームやロッカー・名札を準備し、人不足の現場で接客や給油の仕方など様々教えて、やっと戦力となったかな、といったあたりで辞められる。これでは、店長や既存スタッフの負荷が高まるだけです。つまり、人手不足の問題はアルバイトさんを採用しただけでは解消せず、定着しないことには解消しないのです。

　従業員満足という言葉があります。これが高いと人材の定着率は高まるはずですが、その要素は、標準化、能力開発、モチベーションの3つです。これに金銭が含まれていない点がポイントです。アルバイトさんは、高い給料さえ出せばその店舗に居着いてくれるわけではないのです。
　【参考記事】
　自信とモチベーション
　ベテラン社員のモチベーション

　ここを取り違えてしまうと、人材が不足すればするほど時給を上昇させなければなりません。売れない小売店が安売りをして、価格競争の泥沼に陥るのと同様、人件費を上昇させて、人件費高騰競争の泥沼に陥るわけです。

　安売りから脱却するには、提供する商品・サービスの付加価値、つまり顧客満足を高める必要があるように、人手不足解消のための人件費高騰から脱却するには、当店で働く付加価値、つまり従業員満足を高める必要があります。

　従業員満足を向上させれば、高い人件費を払わずとも人材は定着すると言えます。そして、従業員満足を向上させれば、顧客満足が向上し、業績が拡大する可能性が高まります。その結果、昇給が実現しやすくなり、従業員は高い人件費で働くことができる、という正のスパイラルが動き出すでしょう。

従業員満足を向上させるには

　前述の通り、従業員満足は3つの要素から構成されますが、1つ目の標準化に関しては、マニュアルの整備の他に、経営理念の構築が必要です。それにより、当社らしさや事業運営の力強さが発揮されるとともに、経営理念が従業員の拠り所となるためです。
　【標準化に関する参考記事】
　経営理念が意味するもの
　経営理念の浸透が現場にもたらした効果

　2つ目の従業員満足の要素である能力開発に関しては、仕事をしながら現場でトレーニングをを行うOJT（オン・ザ・ジョブ・トレーニング）の充実度を向上させる必要があります。「OJTという名のほったらかし」は多くの職場で見受けられ、そのことが離職率を上げている印象があります。
　【能力開発に関する参考記事】
　うまくいくOJT、うまくいかないOJT

　3つめの従業員満足の要素であるモチベーションは、金銭や人間関係で向上するものではないことが実証研究で明らかになっています。中小企業にとって経営資源の大きなウエイトを占めるのは「人」です。人材を活用するためには、彼らのモチベーションに目を向ける必要があります。
　【モチベーションに関する参考記事】
　仕事の覚悟を決める
　モチベーションアップの方法
　「認める」と「褒める」の違い
　年上の部下への対応

　人手不足に喘ぐガソリンスタンドは、人件費をいたずらに高騰させ、採用できても定着しない、という罠に陥らないようにしなければいけません。

　また、応募者が少ないという声もあちこちで伺いますが、応募したくなる告知物を作成しているのでしょうか。顧客に販売するためのPOPには趣向を凝らしますが、アルバイトに応募しようと思わせるような趣向を凝らした告知物はあまり見かけません。この点に関しては以下の記事を参考にして下さい。特に経営理念など、運営上の特徴や、目指す姿を打ち出さないことには、他店との人材争奪戦に負けてしまいます。
　【参考記事】
　人材の募集をかけても人が来ないのはなぜか

　私もガソリンスタンドの現場で人手不足にはさんざん苦しみましたが、参考記事含む上記の取り組みでこの問題を解決してきました。上げるべきは人件費ではなく、従業員満足であることをご理解いただき、多くのガソリンスタンド、ロードサイド店舗が人手不足から脱却されることを願ってやみません。