人事異動をしても自社の成長がないのは戦略がないから

戦略の考え方

人事異動の目的とは

 複数店舗を運営する事業者における人事異動の目的は、一般的に業績が低迷する店舗のテコ入れ、従業員の成長促進などを通じた全社の業績向上であることだと思います。

 ある地方都市で複数のロードサイド店舗を展開している、その事業者も上記の目的で人事異動を行いました。その内容は、各店舗の副店長クラス全員を他店へ異動(副店長をシャッフル)させるというものでしたが、結果として全社的な業績は落ち込んでしまいました。

業績が悪化した理由

 もともと各副店長は、積極的に接客・販売に努めていました。それにより、副店長を慕う顧客が多く、各副店長が自身のファンともいうべき顧客を持っていました。
 人事異動により、各副店長を慕う多くの顧客が赴任先の店舗へ移動しました。また、各副店長のファンとしてこれまでその店舗で購買していたものの、赴任先の店舗に行ってまで購買するまでもない、と判断した顧客は、競合他社へ流出してしまいました。
 つまり、組織の力ではなく、社員個人の力で売上を確保していたことが、人事異動により業績を悪化させました。

 今年3月に安倍首相とオバマ前米国大統領が会食した、業歴80年を超える銀座の寿司店「久兵衛」の主人である今田洋輔氏は、日本経済新聞の取材で「人気のある板前と特定のお客様の関係で成り立つ店は企業ではない」と語っています。

組織の構成要素

 経営学の大家と呼ばれる米国の経営学者、チェスター・バーナードは、組織の成立条件として、標準化、貢献意欲、コミュニケーションの3つを挙げています。会社という形をとっていても、この3つの要素のどれかが欠けていると、組織とは呼べないのです。

 このうち、標準化について、前述の今田氏は同じく日経新聞の取材で「私が先代主人から受け継いだ料理の技術を板前が取得し、提供すればおのずと味は均一化するのです。だから私のやり方でやるように板前を徹底的に指導します。板前が個性を出すのはその先です」と語っています。

 仕事が標準化されておらず、店舗スタッフの自己流の接客・販売で自身のファンを掴み、売上を向上させても、それは、組織としての力ではなく、個人の力による売上です。まずは、仕事の仕方を標準化し、それにより業績を上げることができるようにすることが重要です。

 また、仕事を標準化してしまうと業績が上がらない、という経営者もいますが、標準化したから実績が出ないのではなく、実績に結びつかない標準化の方法をとっているのかもしれません。
 さらには、店舗スタッフが仕事をする際の判断基準となる経営理念も標準化に大きな役割を果たします。
 【参考記事】
 経営理念が意味するもの
 経営理念の浸透がもたらした効果

 また、その他の組織の構成要素である、貢献意欲に関しては以下のコラムを参考にしてください。
 【参考記事】
 仕事の覚悟を決める
 ベテラン社員のモチベーション
 モチベーションアップの方法
 「認める」と「褒める」の違い
 自信とモチベーション
 年上の部下への対応

 さらに、その他の組織の構成要素である、コミュニケーションに関しては以下のコラムを参考にしてください。
 【参考記事】
 店舗の雰囲気を良くするには
 傾聴力とリーダーシップ
 傾聴を用いたコミュニケーション

 売上の確保を個人の力に依存しているということは、組織的に対応しているとは言えず、戦略がありません。つまり、自社を組織にするべく、前述の組織の構成要素を充実させ、その上で戦略を考える、つまり中長期的な視点から経営を考えることが必要です。

 このことは、人事計画、売上・利益計画、行動計画などを包含した経営計画を立案することに他なりません。そして、人事計画に基づいた人事異動を行うことにより、今以上の全社業績向上に結びつくこととなります。
 人事異動は、全社的に標準化された仕事に基づいた上で、他店のノウハウを共有し、相乗効果を狙うものであり、単に人材を入れ替えれば業績が上がるというものではないでしょう。
 【参考記事】
 戦術と戦略の違い

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